技術革新でどんな場所でもワインがつくれる!本当にそれで良かったのか?

ワインテクノロジー1

ワインは、どこでもつくることができる。

本来、ワインは選ばれた土地でしか優れたものがつくられず、だからこそフランスやイタリア、スペインなど主要なワイン産地が重宝されてきました。

もちろん、今もなお世界のワイン産地の頂点に君臨し続けているヨーロッパですが、近頃どこでもワインがつくれるようになっているという、なんとも言えないジレンマが発生しています。

美味しいワインが身近になれば嬉しいものの、本当にそれで良いのか規制の必要性について考えましょう。

ワインテクノロジー2

ワインベルトの存在感の薄さ

ワインについて、少しだけ勉強された方であれば知っているかもしれないワインベルト。

ワインベルトとは、北緯30~50度、南緯30~50度の範囲に入っている場所であれば、ひとまずワイン用ブドウの栽培が可能であり、ワインがつくれるといった指標です。

事実、ワイン産地として知られている国の多くがこのワインベルトに入っていますが、近頃では幅広い国でワインがつくられるようになりました。

さらに、ワインベルトに入っているからといって気候条件に違いが見られるため、意外に寒すぎる、降雨量が多い、台風があるといった状況ではワイン用ブドウは育ちません。

ワインベルト内だから、その外だから。まず、そこはあまり関係ない時代になってきているようです。

ワインテクノロジー3

悪条件を跳ね除ける技術革新

優れたワインをつくるためには、優れたワイン用ブドウの栽培が必須となります。

海外から買ってきたブドウでワインを醸すといった方法もありますが、自国のワインを名乗るといった観点からは、やはり自社畑でつくられたブドウを自社で醸すといったドメーヌ方式が基本です。

しかし、土壌の関係、さらに気候条件の関係など、ここではワイン用ブドウを栽培するのは難しいといった場所は数多くあります。

しかし、中でも日本人は研究熱心であることから、土壌がどうであれば、天候がどうであれば、創意工夫をして優れたワイン用ブドウを栽培できる環境を整える努力を惜しみません。

他国でもそうですが、その結果、ワインは無理と言われていた場所で優れたワインが生まれるといった、驚くべき状況になりつつあるのです。とても素晴らしいことですが、これはワインにとって良いことなのか。

そこを考えるべきでしょう。

ワインテクノロジー4

そこまでするか論

ワインはテロワールを楽しむ、そんな崇高なお酒になっています。

その土地だからこそ生み出せる、神秘的なお酒だからこそ、人々が酔狂しお金を出すわけです。

しかし、ワインを作ってみたかったといった人たちが技術革新、どうにかしてワイン用ブドウをつくり、多種多様な研究の結果それなりのワインをつくだせるようになった今、テロワール信仰はほぼ薄れている状況ではないでしょうか。

本来、その土地で大切に育てられたとはいえ、ほぼ放置されたと過程してつくられるワインこそ、たしかにテロワールを表現しているワインとなります。

それを、全て人間が介入してそれっぽいブドウにしてしまっては、ハウス栽培と何ら変わりはありません。

さらに醸造も技術革新によって美しいワインが誰でもできるような状態であり、もはや工業製品化している可能性すら否めないのです。

本当に、ワインはこれでよかったのでしょうか。簡単には手が出せない、土地との対話の中で生み出されるものではなかったのではないでしょうか。

ここは、賛否両論あると思いますが、考えるべきポイントでしょう。