なぜワイン醸造家は語りたがらないのか?ワインの不思議!

ワインでは、ブドウの品質が主に語られます。
どの産地のワインなのか、どういった品種なのか、どういった品質だったのか。
ヴィンテージもまた、ブドウが生育した年の話なのでブドウが主役と言って過言ではありません。
しかし、一方でそのブドウをワインに仕上げるのは人間であり、醸造家です。
ワインの醸造家は控えめな方が多く、あまり自分を前面に出そうとしません。
しかし、ワインにとって醸造家は命ともいえます。
今回は、ワインと醸造家について考えます。

ワインの醸造家は控えめ
ワインはアルコール飲料ですが、人間の手によって醸されている農産物です。
ワインへと生まれ変わるブドウがあり、それを破砕、醸し、熟成などを行い1本のワインへと仕上げていきます。
ブドウはそれ単体でアルコール発酵ができる希有な果実であり、ある意味で放置しておけばワインができてしまうほどです。
そのためか、人的介入をきらう愛好家も多く、できる限り自然な姿で瓶詰めされたワインが好まれる傾向にあります。
要するに、醸造家は余計なことをするな、ブドウの個性を大切にしろ、そういった向きにあるわけです。
結果、ああしたこうしたと醸造についてあれこれ語る醸造家は少なく、多くの醸造家が、“ブドウがなりたいワインにするため、お手伝いをしただけ”と語ります。
この姿勢は大変控えめです。

シークレットな空間
日本酒の場合、蔵の中で何が行われているのかが語られることが多い傾向です。
一方、使用する米については近頃はテロワールも語られるようになったものの、ブドウほどではありません。
ワインと真逆であるところがユニークですが、ワインの醸造についてあまり詳しく見せているシーンは少ないでしょう。
ある程度、醸している途中や熟成中、瓶詰めの風景を垣間見ることはあります。しかし、細かいテクニックなどはあまり公にならず、シークレットな印象を受けないでしょうか。
ワインの場合、添加物として有名なものに亜硫酸塩がありますが、それだけが使用されていると思っている方も多いようです。
しかし、調べればわかりますがワイン醸造で使用可能な添加物は数多く存在し、ただラベルに表記しなくて良い決まりになっているだけ。
醸造家は、ワインを健全な飲み物として売るため、徹底した努力を行っていることを忘れてはなりません。

経験と知識で選ぶ
ワイン醸造家が言う、ブドウのなりたいように醸造する。
この言葉を間に受けていると、誰でも醸造ができると思われてしまうかもしれません。
近年、日本でも多くのワイナリーが登場し、醸造未経験者も研修や勉強をした上でワインを醸すようになってきています。
ある程度のワインも生まれていますが、数年研修した、大学で勉強した。
それだけで世界に比肩するワインになるかといえば違うでしょう。
世界中にはプロフェッショナルな醸造家がおり、長い経験と才能、さらにワインというものへの造詣の深さから、コンサルタントとして飛び回っている方も少なくありません。
40年醸造のプロとしてイタリアでやってきた人間、昨年日本のどこかで研修を終えた新米醸造家。同じ志だとしても、ワインの品質は大きく乖離ます。
ワインの世界においては、できる限り醸造家の情報を開示していく必要があるかもしれません。ブドウ、テロワールも重要です。
しかし、つくり手である人間の技術やセンス、経験、テクニックの細部を知れるような世界へと進化していって欲しいと考えています。

