気候変動がどう影響するか?銘醸ワインの変化はマーケティング的にどうか?

近年、気候変動における対策が世界各国で行われています。
とくにフランスやイタリアなどワイン大国と呼ばれている国では、以前と同じようなやり方でブドウ栽培・ワイン醸造ができなくなってきているのが実情です。
そんな時、対策として取られているのが新気候に対応するブドウ品種の開発や栽培と言われています。
ボルドーでもそういった試みが行われており、AOCで認めらる品種も増えてくるそうです。
しかし、ワイン好きが納得するのか、その難しいバランスについて考えたいと思います。
新たなワイン産地が増加中
温暖化による影響で、世界のワイン地図に異変が起きていることは多くの方が知っていることでしょう。
日本で言えば北海道、世界的に言えばイギリスやスウェーデンなどで優れたワインが登場しているなど、ワイン産地としては冷涼すぎると言われていた国で良い質のワインがつくられています。
また、ワイン銘醸地でもできる限り冷涼な土地を求めて畑を拡大する流れとなっており、“寒い”と言われていた場所でのブドウ栽培がスタンダードになってきているようです。
しかし、土地には限りもありますし、今までブドウ栽培が向いていなかったというだけあり、まだまだ歴史が浅く新参者的なワインが多いのが実情でしょう。
銘醸地として評価されているよりも、“こんな場所でこれだけのワインができるのか”といった、珍しいといった意味での評価です。
新たな対策とは
今まで優れたワイン産地と呼ばれていた場所で、優れたブドウがでなくなってきた。
そういった懸念から、さまざまな対策が講じられています。
しかし、生産者の中にはもう限界といった声も聞かれているなど、サステナブルなワインづくりがトレンドでありながらも、実情は気候変動によってそれが難しくなってきているのが実情です。
そんな中で、多くの産地で取られている対策が新たな品種の導入、対策になります。
日本は古くから高温多湿な環境でも強いブドウの開発が盛んなので良いですが、ヨーロッパブドウを主体とする世界の銘醸地で新品種の導入は賭けに近いものがあるでしょう。
さらに近頃では、AOC的な原産地呼称制度における品種の数を増やすような動きも出ているなど、ボルドー=カベルネやメルロー、ブルゴーニュ=ピノ・ノワールといった概念も覆ってくるかもしれません。
イタリア、スペインなど暑さに強い土着品種を導入する国もあるなど、ワインの世界はこれから大きく変わりそうです。
腐っても鯛
しかし、高級ワインを購入する層は、この対策をニュースとして捉えている一方、ワインの質をそこまで考えていないようなイメージもあります。
例えば、ボルドーで導入されるヨーロッパブドウとアメリカブドウを掛け合わせた品種、定番品種以外を使用したメドック産のワインを喜んで買うでしょうか。
一度は試すかもしれませんが、品質よりもブランドや歴史でワインを楽しんでいるところがあり、生産者側が“なんか違う”ということで品種や中身を変えた時にファンが離れていく可能性もあるのです。
ワインは腐っても鯛ではありませんが、メドックなどの格付けや畑の格付けが変化しないよう、一度染み付いたブランド価値は品質とイコールとはならないお酒になります。
全く新しい産地であれば別ですが、気候変動への対策を真剣に生産者・国が努力した結果、ブランドの存在に変化があるワインができてそれがマーケティングとして成功するかはわかりません。
“変わらない”ということが魅力だったワインの世界だからこそ、抗えない変化に未来が不安視されています。